伊藤:前記事の運動での予防改善策に引き続き、今号も国立研究開発法人 産業
技術総合研究所 研究員 安藤貴史先生にお話を伺います。
安藤先生、食事面ではどのようなことを心がけたら良いでしょうか?
安藤:前回お話ししたように、私たち人間の身体は、生活スタイルの急激な
変化についていけないため、正月太りのようなことが起こりやすくな
ります。
コロナ禍でも、生活スタイルが急に変わった方や、日によって出社や
テレワークを代わる代わる繰り返している方は、体重の変化に注意が
必要です。
伊藤:具体的にはどのように気をつけると良いでしょうか?
安藤:生活スタイルが安定するまでは、例えば、テレワークの日は意識的に
食事摂取量を減らすようにしたり、食事を制限しなくても体重が変化
しないと感じるまで、日々体重計に乗り、体重変化に注意することが有効です。
※食事量を減らすと飲水量も低下していますので、食事量を減らしたときは水分を意識的に摂取しましょう。
食事量を減らした時の空腹感の有効な解消法には個人差がありますが、例えば、別の事に気を向けたり、
少し身体を動かしてみたり、ゼロカロリーの食品を補助的に摂取することも有効な手立ての一つだと思います。
ストレスがたまるほど無理せず、続けられると自分で思うことをやってみるのが重要です。
伊藤:ちなみに、安藤先生はどのように空腹感をコントロールされていますか?
安藤:私自身はまだ見つかっていませんが(笑)、「意識高い系男子」になった
気持ちで生活スタイル改善に取り組むことにしています。
伊藤:「なったつもりで取り組む!」ですね(笑)
他にはどのようなことに気をつけると良いでしょうか?
安藤:コロナ禍での身体活動量の低下は、身体の代謝機能も低下させてしまいます。
一番気を付けなければならないのは、糖の代謝機能の低下による、高血糖で
す。高血糖を防ぐためには、ドカ食いを出来るだけしないことが必要です。
また、野菜や乳製品をはじめに摂取することも有効かもしれません。
さらに私の研究では、高脂肪食(脂っこい食事)を摂取した、次の食事で高血
糖が起きやすいことが明らかになっています。毎食、高糖質、高脂肪どちらか
に偏らないバランスの良い食事を摂取し続けることが理想的ですが、もし高脂
肪食を摂取した場合は、次の食事では少し糖質の摂取量を控えめにして急激な
血糖値の上昇を防ぐといいかもしれません。(巷では高血糖を招くと肥満にな
りやすいという情報がありますが、ヒト研究では高血糖と体重増加には直接的
な因果関係が今のところ認められていません。
メディアの情報に惑わされないようにしましょう。)
伊藤:安藤先生、2ヶ月に渡り貴重なお話を聞かせてくださり、ありがとうござい
ました!